万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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珠藻(たまも)刈る敏馬(みぬめ)を過ぎて夏草の野島(のしま)の崎に舟近づきぬ
一本(あるほん)に云はく、処女(をとめ)をすぎて夏草の野嶋が崎に廬(いほり)すわれは

巻三(二五〇)
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美しい藻を刈る敏馬を離れて夏草の茂る野島の崎に舟は近づきました。
一本に云はく、美しい藻を刈る処女のいる地をすぎて夏草の茂る野嶋が崎に仮の宿りをします、わたしは
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この歌も先の巻三(二四九)の歌と同じく、柿本朝臣人麿(かきのもとのあそみひとまろ)が詠んだ八首の旅の歌のうちのひとつ。
「敏馬(みぬめ)」は現在の兵庫県神戸市灘区岩屋町。
「野島(のしま)」は淡路島の北端。

先の巻三(二四九)の歌は難波(大阪)の御津を詠ったものでしたが、そこから場面が播磨(兵庫)へ移っているわけですね。
「一本(あるほん)に云はく」の異説は、人麿自身がこの歌を記録として記すときに別案で詠んだものでしょうか。

歌の内容としては、「美しい藻を刈る敏馬を離れて夏草の茂る野島の崎に舟は近づきました。」との、自身の旅の様子をそのまま表現しただけのものにも読めますが、前半の柔和な景色から後半の夏草の茂る野島へ近づいてゆく心の動揺がそこには感じられるように思います。
おそらくは夏草が茂って荒れ果てた野島の地に上陸しようとする不安なこころの動揺を、歌を詠むことによって鎮めようとしたものなのでしょうね。
自身の姿を歌として詠うことで、人麿は自分という魂の形を現世に繋ぎとめようとしているのです。


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万葉集巻三


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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