万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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荒栲(あらたへ)の藤江(ふぢえ)の浦に鱸釣(すずきつ)る白水郎(あま)とか見らむ旅行(ゆ)くわれを
一本に云はく、白栲の藤江の浦にいざりする

巻三(二五二)
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荒い布を織る藤江の浦で鱸を釣る海人と人は思うだろうか。旅行くわたしを。
一本に云はく、白栲の藤江の浦に漁をする
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この歌も巻三(二四九)の歌などと同じく、柿本朝臣人麿(かきのもとのあそみひとまろ)が詠んだ八首の旅の歌のうちのひとつ。
「荒栲(あらたへ)」は「藤」に懸る枕詞。
「藤江(ふぢえ)の浦」は、播磨国明石郡葛江(現在の兵庫県明石市)。
「白水郎(あま)」は「海人(あま)」のことで、この時代に海などで漁をしていた漂泊の民のこと。

この一連の旅の歌がひとつの旅路を詠ったものだとするなら、先の巻三(二五一)の淡路島の北端である「野島(のしま)」から人麿たちはまた舟に乗って本土に戻り明石へ渡ったことになりますね。
そんな「荒い布を織る藤江の浦で鱸を釣る海人と人は思うだろうか。旅行くわたしを。」と、藤江の浦で鱸を釣る自分を人は海人と見るだろうかと詠っています。

この歌も現代語訳すると他人から見た自身の姿を想像しただけの単純な一首となってしまいますが、この時の人麿には海人のもつ漂泊性から連想される孤独感がその根底にあったのだと思われます。
漂泊の海人のような旅路の身の自分が、人麿にはなんとも心もとなく不安に感じられたのでしょうね。


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万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価637円〜〜1101円(税込み参考価格)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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