万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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留火(ともしび)の明石大門(あかしおほと)に入(い)る日にか漕(こ)ぎ別れなむ家(いへ)のあたり見ず
巻三(二五四)
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ともし火の明るい明石海峡に入って行く日に漕ぎ別れて行くのだろうか。家のあたりも見ずに…
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この歌も巻三(二四九)の歌などと同じく、柿本朝臣人麿(かきのもとのあそみひとまろ)が詠んだ八首の旅の歌のうちのひとつ。
「留火(ともしび)の」は「明石」にかかる枕詞。
「入(い)る日」は解釈が別れているようですが、この場合は「沈む夕陽」の意味と解釈したほうが無難しょうか。
つまりは「明るい昼の時間(その日一日)」との別れなわけですね。
そんな「ともし火の明るい明石海峡に沈んで行く夕陽に漕ぎ別れて行くのだろうか。故郷の家のあたりも見ずに…」との、舟の旅路の不安な心情がよく表れている一首のように思います。
「家のあたりも見ずに…」と詠っていますが、これは逆にいえば「家のあたりが見たい」との意味であり家にいる妻を心に一心に思っているわけですね。
この時代の人々は海は他界と接する場所とも考えていました。
おそらくはこの歌も、そんな明石海峡に日が沈んでゆき悪しき霊や魔物たちの活動が活発になってゆく夜の時間の不安な心を、家に残してきた妻を思うことで鎮めようとした旅の鎮魂歌なのでしょう。
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万葉集巻三
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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