万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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天離(あまざか)る夷(ひな)の長通(ながぢ)ゆ恋ひ来(く)れば明石の門(と)より大和島(やまとしま)見ゆ


巻三(二五五)
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天路遠い夷の長い道を恋ながら来ると明石の海峡から大和の陸地が見えるよ。
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この歌も巻三(二四九)の歌などと同じく、柿本朝臣人麿(かきのもとのあそみひとまろ)が詠んだ八首の旅の歌のうちのひとつ。
「夷(ひな)」はこの場合は「異なる世界」という意味でしょうか。
もちろん「異国からつながる海の道」との意味もありますが、どちらかというと「死者や魔物などの住む他界」との解釈のほうが人麿の心情に近いかも知れません。
この時代の人々にとって、海は他界と接する場所としての畏れの象徴でもありました。

そんな「天路遠い夷の長い道を恋ながら来ると明石の海峡から大和の陸地が見えるよ。」と、海の航海から戻ってきて故郷である大和の陸地を目にした安堵感と喜びが素直に表現された一首ですね。
この場合の「大和島(やまとしま)」は海から見た日本の本土との意味ではなく、大和盆地西縁の山脈(生駒、葛城山脈)のことです。
明石の海峡から大和盆地のほうを見ると、妻の居る懐かしい大和の山脈が遠くに見えたわけですね。

他界へと近づいてゆくような海路の旅を終えて目にした懐かしい大和の山脈は、人麿たちにとっては黄泉路から現世に帰って来たような喜びとして感じられたことでしょう。


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万葉集巻三


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万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価637円〜〜1101円(税込み参考価格)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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