万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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柿本朝臣人麿の近江国より上り来し時に、宇治河(うぢがは)の辺(ほとり)に至りて作れる歌一首
もののふの八十氏河(やそうぢがは)の網代木(あじろぎ)にいさよふ波の行く方(へ)知らずも
巻三(二六四)
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もののふの多くの氏、宇治川の網代の木が漂う波のように行く末のわからないことだなあ。
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この歌は柿本朝臣人麿(かきのもとのあそみひとまろ)が近江国より藤原京に戻って来る時に、宇治川のほとりに到ったところで詠んだ一首。
かつて旧都であった近江京や宇治京(宇治にはかつて菟道稚郎子が居て行宮がありました※1)へ思いを馳せながら、自らの旅の身の不安な心を鎮めようとして詠んだ歌なのでしょう。
※1:巻一(七)参照。
「もののふの八十氏(やそうぢ)」は「氏(うぢ)」の響きから「宇治河(うぢがは)」を引き出す序詞。
「網代木(あじろぎ)」は木や竹を編んで網のようにしたものを川に浮かべて魚を獲る仕掛けのこと。
そんな「宇治川の波に揺れる網代木のように行く末もわからない身の上だなあ」との、旅の身の不安な心情がよく表れている一首ですよね。
人麿たちのこの時代にはまだ街道なども整備があまり進んではおらず、旅にはかなり危険の付きまとうものでした。
そんな危険な旅路で、悪しき働きをする道々の神や魔物たちに怯えて動揺する心を、歌を詠うことで鎮めようとしたわけですね。
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万葉集巻三
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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