万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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四極(しはつ)山うち越え見れば笠縫(かさぬひ)の島漕ぎかくる棚無(たなな)し小舟(をぶね)
巻三(二七二)
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四極山を越えて見れば笠縫の島のあたりを漕いで消えていった棚無し小舟よ。
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この歌も巻三(二七〇)の歌などと同じく、高市連黒人(たけちのむらじくろひと)が旅先で詠んだ八首の歌のうちの一首。
「棚無(たななし)し小舟(をぶね)」は、両側に棚を付けない小さな舟のこと。
「四極(しはつ)山」は所在不明。(大阪市東住吉区の臨南寺あたりや、愛知県幡豆郡幡豆町、吉良町あたりという説あり。)
「笠縫(かさぶひ)の島」についてもはっきりとした場所はどこなのかわかっていない(大阪市東成区深江、片江町あたりや、渥美湾中の前島などの説あり)ようです。
そんな「四極山を越えて見れば笠縫の島のあたりを漕いで消えていった棚無し小舟よ。」と、この歌もまた海を漕いで行き視界から消えて行った棚無し小舟に思いを馳せた内容となっています。
おそらくは旅路の心細い黒人自身の境遇を棚無し小舟に重ねて詠むことで、こころの動揺を鎮めようとした一首なのでしょうね。
この歌もまた、旅愁の歌人とも呼ばれる黒人らしい静かな魅力の一首のように感じます。
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万葉集巻三
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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