万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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わが船は比良(ひら)の湊(みなと)に漕ぎ泊(は)てむ沖へな離(さか)りさ夜更(よふ)けにけり
巻三(二七四)
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わが乗る船は比良の湊に船泊りしよう。沖へは離れてゆくな。夜も更けて来たことだ。
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この歌も巻三(二七〇)の歌などと同じく、高市連黒人(たけちのむらじくろひと)が旅先で詠んだ八首の歌のうちの一首。
「比良(ひら)」は近江の舞子、比良川の河口。
「わが乗る船は比良の湊に船泊りしよう。沖へは離れてゆくな。夜も更けて来たことだ。」との、船旅の夜への不安がよく表れている一首ですよね。
この時代、海は異界との境目だと信じられていました。
また、夜は悪しき魔物たちが最も活発に活動する時間だとも考えられていたようです。
そんな魔物たちの活発に活動する夜の時間が近づいてくる前に「湊に船泊りしよう(湊へ戻ろう)」と言霊として詠うことで、黒人は夜を前に動揺する自分自身の心を鎮めようとしたわけです。
たとえば現代人でも恐怖などを感じたときに「あー怖い怖い(ここから去ろう)」と口に出したりことで、少しだけ気持ちが落ち着いたりすることがありますよね。
あの感覚を思い出していただければこの時の黒人の心も理解しやすいかと思います。
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万葉集巻三
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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