万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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春日蔵首老の即(すなは)ち和(こた)へたる歌一首

宜(よろ)しなへわが背(せ)の君の負(お)ひ来(き)にしこの勢(せ)の山を妹(いも)とは呼ばじ

巻三(二八六)
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けっこうなことです。けれどもわが背の君と同じく「背」の名を負って来たこの山を、今さら人は「妹山」と呼ばないでしょう。
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この歌は丹比真人笠麿(たぢひのまひとかさまろ)が紀伊国(きのくに)の勢(せ)の山を越えた時に詠んだ先の巻三(二八五)の歌に、春日蔵首老(かすがのくらのおびとおゆ)が答えた一首。
「背山(夫の山)」を「妹山(妻の山)」と呼び換えてはどうだろうと提案した丹比笠麿の巻三(二八五)の歌に対して、「けっこうなことです。けれどもわが背の君と同じく「背」の名を負って来たこの山を、今さら人は「妹山」と呼ばないでしょう。」と笠麿の提案をよい思いつきと誉めながらも、やはり人々は長年「背山」呼んできた名前を今さら呼び換えたりしないだろうと答えています。

これは一見、丹比笠麿の歌の提案を否定しているだけのようにも取れますが、「わが背の君の負ひ来にし」とは、丹比笠麿のことを妻が「わが背」と呼んできたように、の意味であり丹比笠麿の巻三(二八五)の歌が家に残してきた妻を思ってのものであることの意を酌んでの歌なわけですね。

つまりは山の名など変えなくともすぐに家に帰ってまたあなたを「わが背(せ)」と呼ぶほんとうの「妹(いも)」に逢えますよ、との意味が込められている一首なのでしょう。


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万葉集巻三


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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