万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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穂積朝臣老(ほづみのあそみおゆ)の歌一首

わが命(いのち)し真幸(まさき)くあらばまたも見む志賀の大津(おほつ)に寄する白波(しらなみ)

右は今案(かむが)ふるに、行幸(いでまし)の年月(としつき)を審(つばひ)らかにせず

巻三(二八八)
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私の命が無事であったならまた見たいものです。この志賀の大津に寄せる白波を。
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この歌は天皇の志賀(しが)行幸に従駕した穂積朝臣老(ほづみのあそみおゆ)の詠んだ歌一首。
どうやら石上卿(いそのかみのまへつきみ)が詠んだ先の巻三(二八七)の歌と同じ行幸の時のもののようですね。

穂積老は元正天皇の乗輿を指弾した不敬罪(この事件については詳しいことはわからないようです)で斬首に処せられそうになったところを、首皇子の奏上で減刑されて佐渡島に流刑(後に聖武天皇の恩赦で許されて帰京)となった人物ですが、この歌はその事件よりも以前のものかと思われます。

歌の内容は「私の命が無事であったならまた見たいものです。この志賀の大津に寄せる白波を。」と、志賀の大津に寄せる白波を詠っていますが、これもおそらくは大津の土地の神の加護を得ようとした土地讃めの一首なのでしょうね。
「私の命が無事であったなら」との上の句に、旅路の不安がよく表れているようにも思います。

後に官道が整備され各地に国府などが置かれることで貴族や官人たちの間では徐々にこのような旅の不安も薄れていくようですが、穂積老たちの時代にはまだまだ純粋に道々の神や霊に畏れ怯える危険な旅が続いていたようですね。


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万葉集巻三


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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