万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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倉橋(くらはし)の山を高みか夜(よ)ごもりに出で来る月の光乏(とも)しき
巻三(二九〇)
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倉橋山が高いので夜の闇に出て来る月が遅くて光が乏しいよ。
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この歌も先の巻三(二九〇)の歌と同じく、間人宿禰大浦(はしひとのすくねおほうら)の初月(みかづき)が三日月を詠んだ二首の歌のうちのひとつ。
「三日月が空に懸って夜道は明るくてよいだろう。」と詠った先の巻三(二九〇)の歌とは反対に、「倉橋山が高いので夜の闇に出て来る月が遅くて光が乏しいよ。」と、こちらでは倉橋山が邪魔をして月の光の乏しい心もとなさを詠っています。
「倉橋山(くらはしやま)」は、現在ではこの名の山は大和盆地には存在しませんが、奈良県桜井市と宇陀市にまたがる「音羽山(おとはやま)」か、あるいは多武峰(とうのみね)のいずれかの山がそうではないかと云われています。
この歌もまた、いつ悪しき魔物に出逢うかもわからない時代の夜道の心細さがよく表れている一首ですよね。
奈良県桜井市の聖林寺(しょうりんじ)前にあるこの歌の歌碑。
聖林寺(奈良県桜井市)。
倉橋山かと云われる音羽山(写真左)
多武峰からみた音羽三山(写真奥の左端から音羽山、経ヶ塚山、熊ヶ岳)。
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万葉集巻三
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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