万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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不尽山(ふじのやま)を詠める歌一首并て短歌

なまよみの 甲斐(かひ)の国 うち寄する 駿河(するが)の国と こちごちの 国のみ中(なか)ゆ 出で立てる 不尽(ふじ)の高嶺(たかね)は 天雲(あまぐも)も い行きはばかり 飛ぶ鳥も 飛びも上(のぼ)らず 燃ゆる火を 雪もち消(け)ち 降る雪を 火もち消(け)ち 言ひもえず 名(な)づけも知らず 霊(くず)しくも います神かも 石花(せ)※1の海と 名づけてあるも その山の つつめる海そ 不尽河(ふじがは)と 人の渡るも その山の 水の激(たぎ)ちそ 日(ひ)の本(もと)の 大和(やまと)の国の 鎮(しづめ)とも 座(いま)す神かも 宝(たから)とも 生(な)れる山かも 駿河なる 不尽の高嶺は 見れど飽(あ)かぬかも

※1:「石花」二字で「せ」。

巻三(三一九)
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なまよみの甲斐の国と、波打ち寄せる駿河の国と、あちこちの国の中心にそびえ立っている富士の高嶺は、天雲も流れゆくをためらい、飛ぶ鳥も飛んで上らず、頂の燃える火を雪で消し、降る雪を火で消し、言いようもなく、名づけようもなく、遠くいらっしゃる神だ。石花の海と人々が名づけた湖も、その山が抱く海だ。富士川として人の渡る川も、その山の発する激流だ。日の本の大和の国の鎮めとしていらっしゃる神だ。宝として生まれた山だ。駿河の富士の高嶺は何度見ても見飽きることがないなあ。
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この歌も先の巻三(三一七)の歌などと同じく、富士山を讃えて詠んだ長歌。
作者は不明ですが、万葉集の目録に笠朝臣金村歌集所出の歌とあることから、あるいは笠朝臣金村(かさのあそみかねむら)自身の歌でしょうか。

歌の内容はまず富士の山が国の中心にそびえ立っている威容を詠い、神の山だと讃えています。
また、「石花(せ)の海」(精進湖、西湖)を富士山が抱く湖であると詠い、富士川が富士山から発する激流であるとも讃えています。
最後に、そんな富士山を日の本の大和の国の鎮めの神であるとして、何度見ても見飽きない山であると詠っています。

まあ、いわゆる典型的な土地讃めの歌ですが、この歌の詠まれた当時の人々も富士山を特別な神の山と讃えていたことがよくわかる一首ですよね。
現在人が見ても神々しい富士の山ですが、感受性豊かな万葉時代の人々には富士山の姿がまさに神そのものとして見えたことでしょう。


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万葉集巻三


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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