万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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山部宿禰赤人(やまべのすくねあかひと)の伊予(いよ)の温泉に至りて作れる歌一首并て短歌
皇神祖(すめろき)の 神の命(みこと)の 敷(し)きいます 国のことごと 湯(ゆ)はしも 多にあれども 島山(しまやま)の 宜(よろ)しき国と こごしき 伊予(いよ)の高嶺(たかね)の 射狭庭(いさには)の 岡に立たして うち思(しの)ひ 辞思(ことしの)ひせし み湯(ゆ)の上(うへ)の樹郡(こむら)を見れば 臣(おみ)の木も 生(お)ひ継(つ)ぎにけり 鳴く鳥の 声も変らず 遠(とほ)き代に 神(かむ)さびゆかむ 行幸処(いでましどころ)
巻三(三二二)
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歴代の天皇の、神の命がお治めになる国々に、出湯は多くあるけれども、島山の立派な国と、天皇が険しい伊予の高嶺の、射狭庭の岡にお立ちになって、昔をお思いになり、言挙げなさった出湯の上の木々を見れば、モミの木も今に生え継いでいる、鳴く鳥の声も変わらず、遠く後の世まで神々しくなってゆくだろう、天皇の行幸なされたこの土地よ。
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この長歌は伊予(いよ)の温泉を訪れた山部宿禰赤人(やまべのすくねあかひと)が詠んだ一首。
「伊予(いよ)の温泉」は愛媛県松山市の道後温泉。
「射狭庭(いさには)の岡」は温泉の裏にある岡のこと。
この温泉はかつて斉明天皇が行幸されたとき、夫であった舒明天皇と一緒に訪れた昔のことを思い出して歌を詠まれた(巻一:八左注参照)場所でもあります。
「昔をお思いになり、言挙げなさった」とはその時のこと。
そんな「歴代の天皇が行幸された伊予(いよ)の温泉は、この後も未来永劫、遠く後の世まで神々しくなってゆくだろう」との、この歌も天皇への祝福と、伊予の温泉を讃えた土地讃めの言霊の歌なわけですね。
同時に呪術的な言葉の中に緻密な詩的さも感じさせてくれる山部赤人らしい長歌のようにも感じます。
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万葉集巻三
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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