万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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釈通観(しやくつうくわん)の歌一首
み吉野の高城(たかき)の山に白雲(しらくも)は行きはばかりてたなびけり見ゆ
巻三(三五三)
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み吉野の高城の山に白雲が流れなずんでたなびいているのが見えるよ。
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この歌は釈通観(しやくつうくわん)の詠んだ一首です。
「高城(たかき)の山」は所在不明ですが、奈良県の吉野山の東にあるいずれかの山。
釈通観は巻三(三二七)の歌の通観僧(つうくわんほふし)のことで、「釈(しやく)」は仏徒のこと。
そんな釈通観が吉野の高城山を詠んだ一首ですが、「み吉野の高城の山に白雲が流れなずんでたなびいているのが見えるよ。」と、白雲も離れがたく思うほどのその山の威容を褒めたたえています。
まあ、この歌もいわゆる高城山の土地の神への言霊による賞讃の歌なのでしょうね。
奈良時代に入ると飛鳥時代に比べて人々の土地の神々や魔物を畏れる心にも少し変化が見え始め、時には旅を楽しむ余裕すらも出て来るのですが、それでもこの歌に見られるように根本部分での神々への畏敬の念は失われていなかったようですね。
人間がまだまだ大自然の神々や土地の精霊たちと密接に結びついて生きていた時代を感じさせてくれる、そんな一首のようにも思います。
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万葉集巻三
万葉集書籍紹介(参考書籍)
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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