万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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武庫(むこ)の浦を漕(こ)ぎ廻(み)る小舟粟島(をぶねあはしま)を背向(そがひ)に見つつ羨(とも)しき小舟

巻三(三五八)
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武庫の浦を漕いで来る小舟。淡島を背に見つつ都へ向かう羨ましい小舟よ。
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この歌も先の巻三(三五七)の歌と同じく、山部宿禰赤人(やまのべのすくねあかひと)が詠んだ旅の歌六首のうちのひとつ。
「武庫(むこ)の浦」は兵庫県尼崎市、西宮市一帯の武庫川付近の海。
「粟島(あはしま)」は淡路島のこと。

歌の内容はそんな「武庫の浦を漕いで来る小舟。淡島を背に見つつ都へ向かう羨ましい小舟よ。」との、すれ違う小舟を詠った一首ですが、西へ向かう山部赤人の舟に対してすれ違うこの小舟は逆に都の方角へ漕いで行くわけですね。
奈良の都を離れて西国へ向かってゆく山部赤人には、都の方角に向かってゆく小舟が羨ましく感じられたのでしょう。

もちろん奈良の都そのものも恋しく思っての歌ですが、それ以上に赤人の心には都に残してきた妻のことが思い出されていたはずです。
都で夫である自分の旅の無事を祈ってくれているだろう妻を思い出しながら、都の方角へ向かってゆく小舟を詠うことで旅の心細さに動揺しそうになる心を鎮めようとした一首だったのでしょうね。


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万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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