万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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みさごゐる磯廻(いそみ)に生(お)ふる名乗藻(なのりそ)の名は告(の)らしてよ親は知るとも

巻三(三六二)
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みさごのいる磯に生える名乗藻のように、名前を教えてよ。親に知られたとしても。
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この歌も巻三(三五七)の歌などと同じく、山部宿禰赤人(やまのべのすくねあかひと)が詠んだ旅の歌六首のうちのひとつ。
「みさご」は雎鳩(みさご)で、浜辺に棲む猛禽類。

そんな「みさごのいる磯に生える名乗藻のように、名前を教えてよ。親に知られたとしても。」との、女性に対する恋歌ですね。
この時代、女性が異性に名前を教えることは求婚に応じる意味がありました。
「親」はこの場合は娘の親で、娘を見守り監督する立場にありましたが、この歌の結句はそんな「親に知られてもかまわない」との本気の求婚であることを示しています。

一応、内容としては先の巻三(三六一)の歌とも対応していて、旅先で出会った女性に対する求婚の歌のようにも読めますね。

ただ、先の巻三(三六一)の歌は女性が旅の途中の赤人を想像している歌でありこの歌との時系列的な繋がりはあまりないように思われ、この歌に関してもあるいは実際の恋歌ではなくむしろ序詞として使われている上の句の「みさごゐる磯廻(いそみ)に生(お)ふる名乗藻(なのりそ)の」の部分にこそ真実があるようにも感じられます。
つまりは赤人は旅先の荒涼とした海岸で「名乗藻(なのりそ)」を見て、その名乗藻の名から下の句の「名は告(の)らしてよ」の恋の言葉を連想して恋歌として詠んだのではないでしょうか。

そのように解釈して詠むと、旅先の名乗藻が生えるだけの海辺での、人恋しいまでの赤人の孤独感が感じられる歌のようにも思えます。


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万葉集巻三


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万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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