万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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角鹿津(つのがのつ)にして船に乗りし時に、笠朝臣金村の作れる歌一首并て短歌

越(こし)の海(うみ)の 角鹿(つのが)の浜ゆ 大船(おほふね)に 真梶貫(まかぢぬ)きおろし いさなとり 海路(うなぢ)に出(い)でて あへきつつ わが漕ぎ行けば 大夫(ますらを)の 手結(たゆひ)が浦に 海未通女(あまをとめ) 塩(しほ)焼くけぶり 草枕 旅にしあれば 独(ひと)りして 見る験無(しるしな)み 海神(わたつみ)の 手に巻かしたる 玉襷(だすき) 懸(か)けて偲(しの)ひつ 日本島根(やまとしまね)を

巻三(三六六)
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越の海の角鹿の浜から、大船に梶を貫き下ろして、鯨も獲るという海路に出て、苦しみながら私が漕いで行くと、立派な男子が付ける手結…、手結の浦に、海未通女たちの塩を焼く煙が立っている。草を枕の旅なのでそれを独りで見ても甲斐のないことだ。海の神が手に巻く玉のように、美しい襷を懸けるように心に懸けて思ったことだ、大和の故郷を。
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この歌は笠朝臣金村(かさのあそみかなむら)が角鹿津(つのがのつ)から船に乗ったときに詠んだ長歌。
「角鹿津(つのがのつ)」は、敦賀の港。
「越(こし)」は、北陸の越前、越中、越後の三国。
「手結(たゆひ)が浦」は、福井県敦賀市田結のこと。

この時、笠金村は越前国司の石川乙麿と同行(巻三:三六八参照)したと思われ、海路で国府の武生に向かっていたようです。
そんな笠金村の詠んだ長歌ですが、越の海の角鹿の浜から船に乗って海路を行く様子を細かに詠いながら、けれども妻の居ない孤独な旅であるとその寂しさを悲しんでいます。
まあ、これも越の海の雄大さを誉めた土地讃めの歌であると同時に、旅先にあって家に残してきた妻を思うことで心の動揺を鎮めようとしたいわゆる旅の鎮魂歌なのでしょうね。

「海神(わたつみ)の」は「深い」などにかかる枕詞ですが、この歌の中では枕詞でなくそのまま「海の神」を意味しています。
この時代の人々は海をはじめあらゆるものに荒ぶる神が宿っていると信じ、このような賞讃の歌を奉げることでその怒りを鎮めて逆に旅の加護を得ようとしたのです。


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万葉集巻三


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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