万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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木綿畳(ゆふだたみ)手に取り持ちてかくだにもわれは祈(こ)ひなむ君に逢はぬかも

右の歌は、天平五年の冬十一月を以(も)ちて、大伴の氏(うぢ)の神に供(そな)へ祭る時にいささかこの歌を作れり。故に神を祭る歌といふ。

巻三(三八〇)
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木綿の布を手に取り持ってこれほどまでに私は祈ります。愛しいあの人に逢いたいと。
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この歌も大伴坂上郎女(おほとものさかのうへのいらつめ)が、天平五年の十一月に大伴氏の氏神を祭った際に作った歌で、先の巻三(三七九)の歌につけられた反歌です。
歌の後の注釈にもあるように本来は長歌反歌ともに神祭歌ではなく恋歌ですが、神祭の日に恋の成就を氏神に祈ったことから神祭歌とされています。

内容としては長歌で詠った恋の祈りを言葉もそのままに繰り返しているだけですが、長歌の内容を凝縮して何度も繰り返して唱えられる呪術歌になっている点で万葉時代初期のころからつづく反歌本来の姿を見事に受け継いでいる歌のように思います。
この点からも大伴坂上郎女の優れた歌の才や力量が推し量れるのではないでしょうか。

大伴坂上郎女(坂上郎女とも)は非常に歌の才に優れた女性であるとともに、恋多き女性でもありました。
若き頃に一度、穂積皇子(ほづみのみこ)に嫁ぎましたが、皇子の死後には藤原麿(ふじわらのまろ)の愛を受け、さらに麿が疫病で早世した後には異母兄の大伴宿禰宿奈麿(おほとものすくねすくなまろ)の妻となって家持の妻ともなった坂上大嬢とその妹の坂上二嬢を産んでいます。
また、大伴家の刀自(とじ)として家持や書持の教育にも多大な影響を与え、若き日の家持の師ともいえるような存在であったと想像できます。


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万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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