万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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この夕柘(ゆふへつみ)のさ枝(えだ)の流れ来(こ)ば打たずて取らずかもあらむ
右の一首は、
巻三(三八六)
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この夕べにもし柘の枝が流れて来たとしても「梁(やな)」を仕掛けていないので私は手にすることが出来ないだろうなあ。
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この歌も先の巻三(三八五)の歌と同じく、「仙柘枝(やまひとつみのえ)の歌」と題された三首の歌のうちのひとつ。
歌の後の左注は、「右の一首は、」の後にもとは作者名が記載されていたのだと思われますが欠落していて誰の作かわからなくなっています。
柘枝伝説では、漁夫の味稲(うましね)が吉野川で「梁(やな)」という魚を獲る道具を仕掛けたところに柘の枝が引っかかってその柘の枝が美女に変身したわけですが、こちらの歌では「この夕べにもし柘の枝が流れて来たとしても「梁(やな)」を仕掛けていないので私は手にすることが出来ないだろうなあ。」と、自らは梁を仕掛けていないので柘の美女は手に入らないだろうと詠っています。
つまりは自分は仙女と結ばれた味稲のようにはなれないことを嘆いた一首なわけですが、昔の伝説の登場人物を羨む気持ちは現代人にも十分共通する感情ですよね。
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万葉集巻三
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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