万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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羈旅(たび)の歌一首并て短歌

海若(わたつみ)は 霊(くす)しきものか 淡路(あはぢ)島 中に立て置きて 白波(しらなみ)を 伊予(いよ)に廻(めぐ)らし 座待月(ゐまちづき) 明石(あかし)の門(と)ゆは 夕(ゆふ)されば 潮(しほ)を満(み)たしめ 明けされば 潮を干(ひ)しむ 潮騒(しほさゐ)の 波(なみ)を恐(かしこ)み 淡路島 磯隠(いそかく)りゐて 何時(いつ)しかも この夜(よ)の明けむと さもらふに 眠(い)の寝(ね)かてねば 滝(たぎ)の上(うへ)の 浅野(あさの)の雉(きぎし) 明けぬとし 立ち騒(さわ)くらし いざ児等(こども) あへて漕(こ)ぎ出(で)む にはも静(しづ)けし

巻三(三八八)
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海の神は霊妙あらたかだ。淡路島を中に立てて、白波を伊予までめぐらし、十八夜の月の明るい明石の海峡からは、夕方になると潮をみなぎらせ、夜明けには潮を引かせる。潮鳴りの波を恐れて、淡路島の磯に船を寄せ、何時この夜が明けるかと海をうかがっていると、浅い眠りの中に。滝の側の浅い野の中に雉が夜が明けたと立ち騒ぐ声が聞こえる。さあみんな、漕ぎ出そうではないか、海上も静かな朝だ。
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この歌は羈旅(たび)の歌と題された長歌。
作者は不明ですが、次の巻三(三八九)の反歌の後につけられた左注によると若宮年魚麿(わかみやのあゆまろ)が誦じた歌とのことです。
若宮年魚麿は伝誦の詞人であったらしく山部宿禰赤人(やまのべのすくねあかひと)とも関係のあった人物のようですが、この歌もそんな年魚麿が好んで誦じたもののひとつだったのでしょうね。

歌の内容のほうは「海の神は霊妙あらたかだ。」と、海の神の霊力を褒め称え、淡路島のことや伊予までめぐる白波など、瀬戸内海の海の威容を詠っています。
そしてそんな海の潮鳴りの波を恐れて淡路島に船を寄せて一晩を過ごした後、明け方になってようやく穏やかになった海を歓び、いざ出航して行こうと皆に詠いかけています。

まあ、冒頭の詠い出しを読んでもわかるように、この歌も海の神に航海の安全を祈って奉げた旅の鎮魂歌なのでしょうね。
このように、万葉の時代の人々は海の神に歌を奉げることで、荒ぶる神の心を鎮め、航海の安全を祈ってから船旅へと漕ぎ出したわけです。

あるいは若宮年魚麿も船旅で海へ漕ぎ出す前に、古くからの伝承歌であるこの歌を誦じて海の神に奉げたのかも知れませんね。


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万葉集巻三


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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