万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
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(解説:黒路よしひろ)
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或る本の反歌二首
隠口(こもりく)の泊瀬少女(はつせをとめ)が手に纏(ま)ける玉は乱(みだ)れてありといはずやも
巻三(四二四)
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隠り国の泊瀬の少女が手に巻いている玉は、緒が切れて乱れ散っているというではないか。
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この歌は石田王(いはたのおほきみ)が亡くなった時に山前王(やまくまのおほきみ)の詠んだ巻三(四二三)の長歌につけられた二首の反歌のうちのひとつ。
ただ、題詞に「或る本の反歌二首」とあることや、歌の内容が巻三(四二三)の長歌の反歌には微妙に合わないことから、もともとは別に詠まれた歌ではないかとも思われます。
また、この二首の反歌の後の左注には「右の二首は、或は云はく、「紀皇女(きのひめみこ)の薨(かむあが)りましし後に、山前王(やまくまのおほきみ)、石田王(いはたのおほきみ)に代わりて作れり」といへり。」とあるので、紀皇女の亡くなった後に山前王が石田王に代わって作った歌を、後の世の編者がおなじく山前王の作である巻三(四二三)の長歌の関連歌として、反歌として掲載したのかも知れませんね。
「隠国(こもりく)の泊瀬」は現在の奈良県桜井市初瀬の地。
「泊瀬少女(はつせおとめ)」はその地にいる少女のことですが、この場合は神事などに係わる特別な少女でしょうか。
あるいは左注を信じるなら泊瀬に葬られた「紀皇女」のことを譬えてこのように表現したのかも知れませんが…
そんな「隠り国の泊瀬の少女が手に巻いている玉は緒が切れて乱れ散っているというではないか。」と、玉の緒の切れたことを嘆く内容となっています。
ここでいう「玉(たま)」は、手に巻くとあるので勾玉や丸い玉を数珠などのように緒(紐糸)でつないだ腕輪のことかと思われます。
その玉の緒が切れて玉が乱れ散るのは、魂がばらばらに散ってしまうことを意味しているのでしょう。
この時代の人々は、魂の力が弱まったり肉体から魂が離れることで人は病になったり死に到ると信じていました。
つまりは、この歌を巻三(四二三)の長歌の反歌として読むなら石田王(左注を信じるなら紀皇女)の魂が散り散りになって命が失われたことを悲しみ嘆く一首なわけですね。
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万葉集巻三
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万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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