万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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人言(ひとごと)の繁(しげ)きこのころ玉ならば手に巻き持ちて恋(こ)ひずあらましを
巻三(四三六)
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人の噂のうるさいこの頃、あなたが玉だったなら手に巻いて持って逢えずに恋苦しむこともないのに
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この歌も巻三(四三四)の歌などと同じく、河辺宮人(かはべのみやひと)が姫島(ひめしま)の松原(まつばら)を通ったときに、娘子(をとめ)が倒れて亡くなっているのを見て哀しんで詠んだ四首の歌のうちのひとつ。
突然の恋歌で少々戸惑ってしまいますが、これはどうやら河辺宮人が亡くなった娘子の生前の立場に立って詠んだ歌のようですね。
万葉の時代、恋は秘め事であり人々は自分の恋が他人に知られて噂になることを極端に嫌っていました。
「人の噂のうるさいこの頃、あなたが玉だったなら手に巻いて持って逢えずに恋苦しむこともないのに」とは、それゆえ、この時代の恋人同士なら誰もが共感できた内容だったようですね。
ただ、この姫島の松原で亡くなっていた娘子はどうやら恋に悩んだ末の入水だったらしく、あるいは結ばれない立場の男性との恋であったのかも知れません。
そんな無念の魂をなぐさめるために、お互いに恋の言葉を交し合ったであろう生前を想像し、河辺宮人が奉げた慰めの一首だったのではないでしょうか。
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万葉集巻三
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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