万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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和銅(わどう)四年辛亥(しんがい)。河辺宮人(かはべのみやひと)の姫島(ひめしま)の松原(まつばら)に美人(よきひと)の屍(かばね)を見て、哀慟(かなし)びて作れる歌四首

風早(かぜはや)の美保(みほ)の浦廻(うらみ)の白(しら)つつじ見れどもさぶし亡(な)き人思へば
〔或は云はく、見れば悲しも無き人思ふに〕

巻三(四三四)
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風早の美保の浦の白つつじを見ても楽しめないことだなあ。亡くなった人を思うと…
〔或は云はく、見れば悲しいことだなあ。亡くなった人を思うと…〕
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この歌は河辺宮人(かはべのみやひと)が姫島(ひめしま)の松原(まつばら)を通ったときに、娘子(をとめ)が倒れて亡くなっているのを見て哀しんで詠んだ四首の歌のうちのひとつ。
巻三(四三七)の歌の後の左注には、これとおなじ題詞の歌がすでに巻二(二二八) 、 巻二(二二九)、の歌に出ていることが指摘されていますが、歌の優劣をつけがたいためにこちらの巻三(四三四)以降の歌も重ねて収録しておくとあります。

「河辺宮人」は飛鳥の「河辺の宮人」の意味で名前ではありません。
おそらくは朝廷の公務での旅路だったのでしょう。
題詞にある「姫島」は所在は不明ですが、摂津のあたりでしょうか。

ただし、歌の中では「風早の美保(みほ)」に居たとなっており、こちらも所在不明ですが和歌山県日高郡美浜町との説もあり。
あるいはこちらの巻三(四三四)からの四首は風早の美保の浦を訪れたときに、姫島の松原で行き倒れになっていた娘子のことを思い出してあらためて詠んだ歌なのかも知れませんね。

歌の内容自体は、姫島の松原で行き倒れになっていた娘子に「風早の美保の浦の白つつじを見ても楽しめないことだなあ。亡くなった人を思うと…」と詠い掛けて、その死を悲しみ悼んだ挽歌となっています。
万葉の時代、死は穢れであり死者のいる場所にはその怨念が居ついて人々に災いを為すと信じられていました。
それゆえに、このように旅の途上で行き倒れの死者に出会った時には、自らに災いが振り掛からないようにかならずその死者の魂をなぐさめる挽歌を奉げてから通りました。
この歌が風早の美保の浦で詠まれたものであるのなら、よく似た景色の中で姫島の松原の死者の無念を思い出してふたたび鎮魂の歌を奉げたといったところでしょうか。


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万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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