万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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天平二年庚午(かうご)。冬十二月に、太宰師大伴卿(だざいのそちおほとものまへつきみ)の京(みやこ)に向ひて上道(みちだち)せし時に作れる歌五首

吾妹子(わぎもこ)が見し鞆(とも)の浦のむろの木は常世(とこよ)にあれど見し人そなき

巻三(四四六)
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私の妻が見た鞆の浦のむろの木は永遠にあるけれど一緒に見た妻はもういないよ
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この歌は天平二年庚午(かうご)の冬十二月に、大伴旅人(おほとものたびと)が大宰師(大宰府の長官)としての三年近い任期を終えて奈良へ戻るときに詠んだ五首のうちの歌のひとつ。
巻三(四三八)の歌などと同じく、この奈良への帰路で詠んだ五首の歌もどれも大宰府に来てすぐに亡くなった妻を偲ぶものとなっています。

「むろの木」は「杜松(ねず)の木」のこと。

この歌も、「大宰府に赴任してくるときに妻と見た鞆の浦のむろの木は変わらずあるのに、あの時一緒に見た妻はいまはもういないと」との、なんとも切ない一首ですよね。
赴任してくるときにはまさかひとりで奈良に帰ることになるとは、旅人も夢にも思っていなかったことでしょう。
鬱屈した心で大宰府にやって来たあの頃ではあったけれど、思い返してみれば妻が一緒に居てくれただけで幸せだったのだと、あるいは気づかされる帰郷の旅となったのかも知れません。
この奈良への帰郷の旅の途中、目にするもののどれもこれもが亡くなった妻との懐かしい思い出として旅人の心を哀しませたようです。


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万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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