万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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磯の上(うへ)に根這(ねは)ふむろの木見し人をいづらと問はば語り告げむか

巻三(四四八)
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磯の上に根を這わすむろの木に、かつて見た人は何処に居るかと問えば語って教えてくれるだろうか。
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この歌も巻三(四四六) や 巻三(四四七)の歌と同じく大伴旅人(おほとものたびと)が大宰師(大宰府の長官)としての三年近い任期を終えて奈良へ戻るときに詠んだ五首のうちの一首で、大宰府で亡くなった妻を偲ぶ歌。
かつて共に妻が見たむろの木に、「あの時一緒におまえを見た妻はいま何処に居るかと問えば、語って教えてくれるだろうか。」と問い掛けているわけですが、これは見事な根を這わせ人間よりも長く存在しているむろの木ならば死んだ人間の行先も知っているだろうかとの意味が込められているのでしょう。


旅人が大宰府に居る間に山上憶良たちと作り上げた筑紫歌壇といわれる新風は、歌の世界に広がりをもたらすと同時に反面で後の世の歌につながる固定された美意識や世界感を生み出す一歩ともなったのですが、旅人自身の心の中にはまだまだ古来からつづく万葉人らしい神霊崇拝的な精神が深く残っていたようですね。

この歌でも、「妻の魂の居場所が分かるならたとえあの世にだって今すぐにでも逢いにゆきたい」との、そんな旅人の切ない願いがひしひしと感じられる一首になっているように思います。
(まあ、もっとも、その旅人の願いはそう遠くない未来に旅人の死によって叶うことにもなるのですが…)


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万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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