万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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昔こそ外(よそ)にも見しか吾妹子(わぎもこ)が奥(おく)つ城(き)と思(おも)へば愛(は)しき佐保(さほ)山
巻三(四七四)
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昔こそ関係のない場所と見ていたけれど私の妻の墓と思うと愛しい佐保山だ。
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この歌も巻三(四七〇)の歌などと同じく、大伴宿禰家持(おほとものすくねやかもち)が亡くなった妻を思って詠んだ五首の挽歌のうちのひとつ。
「かつては特別な関係のない場所としてぼんやりとしか見ていなかった佐保山が、妻の墓となった今は愛おしい山に思える」との、素直な心情を詠った一首ですね。
いままで気にも留めずにいた場所がある日を境に特別な場所になるとの経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
家持もまた、妻が埋葬されたことでその日から佐保山が愛おしい特別な山になった訳ですね。
ちなみにそれまで家持が佐保山を特別な場所と見ていなかったことなどから、この家持の亡くなった妻は大伴家の氏寺や伴寺には葬られなかったものと思われます。
巻三(四六二)の歌の題詞にこの妻のことが「妾(をみなめ)」と書かれていることなども、あるいは関係しているのかも知れませんね。
まあ、家持にとってはそんなことは関係なく最愛の妻であったことに変わりはありませんが…
以上、家持が亡き妻を悲しんで詠んだ挽歌でした。
愛(は)しき佐保山。
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万葉集巻三
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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