万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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珠衣(たまぎぬ)のさゐさゐしづみ家(いへ)の妹にもの言(い)はず来(き)て思ひかねつ
巻四(五〇三)
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美しい絹の衣のようにさらさらと心が重く沈み込んでいたので家の妻に声も掛けずに来てしまったよ。妻のことが思い出されて仕方がない。
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この歌も巻四(五〇一)の歌と同じ柿本朝臣人麿(かきのもとのあそみひとまろ)の詠んだ歌とされる三首のうちのひとつ。
これまでの二首は恋人へとも妻へ詠い掛けたとも取れる内容でしたが、この歌では家に残してきたとあるのではっきりと妻を思っての一首となっています。
「珠衣(たまぎぬ)」はこの場合は絹の衣のことで、重く沈み込む手触りがあることから心の沈み込んでいた状態の譬えとして使われています。
そんな沈んだ心でいたために妻に声も掛けずに出てきてしまったと、今さらながらに後悔して妻を愛しく思い出しているわけですね。
これも読みようによっては遠き旅路から家の妻を思っての歌にも詠めますが、あるいは単に毎日の宮殿への出仕のあとの歌でしょうか。
(題詞に何も書かれていないことからここでは一応、後者のほうで解釈しておきます。)
まあ、妻自身はおそらくは人麿が声も掛けずに出かけたことなどは気にも留めていないのでしょうが、人麿にとっては心が沈んでいる時だからこそ余計に家の妻のことが思い出されて恋しく感じたのでしょうね。
こういう些細な後悔をする部分からも、人麿という人物が普段いかに恋人や妻に対して細やかな愛情で接していたのかが読み解けるような気もします。
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万葉集巻四
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万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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