万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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中臣朝臣東人(なかとみのあそみあづまひと)の阿倍女郎(あべのいらつめ)に贈れる歌一首
独(ひと)り宿(ね)て絶(た)えにし紐(ひも)をゆゆしみとせむすべ知らにねのみしそ泣く
巻四(五一五)
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独りきりで寝ていて取れてしまった紐の不吉さに、どうしていいのかわからず泣いています。
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この歌は中臣朝臣東人(なかとみのあそみあづまひと)が阿倍女郎(あべのいらつめ)に贈った恋歌。
先の巻四(五一四)の歌と並んでいることから関係した一連の歌のようにも読めますが、どうもこれらの歌は関係のない別資料による収録のようです。
中臣東人は藤原鎌足(ふじはらのかまたり)の娘の婿養子である中臣意美麿(なかとみのおみまろ)の子。
そんな東人が「独りきりで寝ていて取れてしまった紐の不吉さに、どうしていいのかわからず泣いています。」と、阿倍女郎と離れて寝ている夜に紐が取れた不吉さを嘆いています。
この時代、紐などを結ぶ行為はこの世との結びつきや様々なものとの関係を結ぶなどの意味がありました。
まあ、現在でも靴紐が切れることを不吉に感じたりするのと同じようなものと思えばわかりやすいでしょうか。
ですので、この歌の場合は、恋人である阿倍女郎との関係が途絶えてしまうのではないかとの不吉さを感じたわけですね。
あるいは中臣東人には阿倍女郎との関係が終わってしまうのではないかという何らかの予感があったのかも知れませんね。
そんな悪い予感がする中で取れてしまった紐の不吉さが東人の心の不安をさらに増幅させたのでしょう。
阿倍女郎が詠んだ返歌へと続きます。
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万葉集巻四
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万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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