万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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阿倍女郎(あべのいらつめ)の答へたる歌一首

わが持たる三相(みつあひ)によれる糸(いと)もちて附(つ)けてましもの今そ悔(くや)しき

巻四(五一六)
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私の持っている三よりの糸でもって付ければよかったものを、今になって悔やまれます。
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この歌は中臣朝臣東人(なかとみのあそみあづまひと)が贈った先の巻四(五一五)の歌に、阿倍女郎(あべのいらつめ)が答えた返歌。
「三相(みつあひ)によれる糸」とは、三本をより合わせた丈夫な糸のこと。

独り寝の夜に紐が取れた不吉さを嘆いた中臣東人に対して、そんな「私の持っている三よりの丈夫な糸でもって付ければよかったものを、今になって悔やまれます。」と、もっとしっかりと紐を付けておけばよかったとの阿倍女郎の後悔の一首といえるでしょうか。
ちょっとこの歌だけからは阿倍女郎の気持ちがはっきりとせず解釈の難しい一首となっていますが、「今そ悔しき(今になって悔やまれます)」との結句はどこか終わってしまった恋に対する回想にも取れますよね。

おそらくこれは、直前に中臣東人と阿倍女郎の間になんらかの仲違いがあったのではないでしょうか。
「あのときもっとしっかりと結び付けておけば…」との阿倍女郎の後悔は、むしろ中臣東人の心のほうが離れてしまったようにも取れますが…
あるいは中臣東人には阿倍女郎の他にも心を惹かれた女性がいたのかも知れませんね。
この時代には貴族や官人などは一夫多妻の者も多かったようですし中臣東人にとってはそれほど大きな問題とは思っていなかったことが、阿倍女郎にとっては別れを決定づける理由となったのかも知れませんね。

紐が取れた不吉さで中臣東人がそのことに気づいたときにはすべてがもう手遅れだったのでしょう。
恋の終わりとは常にこのように、気づいたときにはすべてが手遅れになっているものなのかも知れませんね。


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万葉集巻四


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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