万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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石川郎女(いしかはのいらつめ)の歌一首 即(すなは)ち、佐保(さほの)大伴の大家(おほとじ)なり
春日野(かすがの)の山辺(やまへ)の道を恐(おそり)なく通(かよ)ひし君が見えぬころかも
巻四(五一八)
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春日野の山沿いの難路も恐れることなく来てくださったあなたなのに、この頃は逢いに来てくださいませんね。
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この歌は石川郎女(いしかはのいらつめ)の詠んだ一首。
石川郎女は同名の人物が万葉集に何人も出てきますが、この歌の石川郎女は題詞に「佐保(さほの)大伴の大家(おほとじ)なり」とあるように大伴安麿(おほとものやすまろ)の妻のようです。
先の巻四(五一七)の歌と並んでいることや歌の内容などから巻四(五一七)の歌の人妻がこの石川郎女だったようにも取れますが、はっきりとしたことはわからないようですね。
そんな石川郎女が大伴安麿に対して「春日野の山沿いの難路も恐れることなく来てくださったあなたなのに、この頃は逢いに来てくださいませんね。」と、安麿の来訪が遠のいたことを悲しんで贈った一首となっています。
この時代の夫婦の形は夫が妻の住む「嬬屋(つまや)」に通う「妻問い婚」という通い婚の形が普通でしたので、夫婦と言えども必ずしも毎晩逢えるわけではなかったのですね。
まあ、来訪が遠のいたと言っても男の来訪を待つ身からすればわずかな期間でも長く感じることもあるでしょうし、安麿が心変わりしてしまったのかどうかはこの歌だけからでは判断がつきかねますが…
恋愛は成就するまでもあれこれと悩ましいものですが、結ばれて夫婦となった後もこのように悩みの種は尽きないものなのでしょう。
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万葉集巻四
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万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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