万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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後(のち)の人の追(お)ひて同(こた)へたる歌一首
ひさかたの雨(あめ)も降らぬか雨(あめ)つつみ君に副(たぐ)ひてこの日暮(く)らさむ
巻四(五二〇)
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天からの雨が降らないものだろうか。雨にこもってあなたに添いながら一日を過ごしたいものです。
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この歌は大伴女郎(おほとものいらつめ)の詠んだ先の巻四(五一九)の歌に、後の世の人が答えて詠んだ一首。
この「後(のち)の人」が誰なのかははっきりとはわからないようですが、大伴女郎の歌に後になって目をとめてわざわざ答えた歌を詠んでいることからおそらくは大伴女郎の息子で万葉集の編者ともいわれる家持ではないかと思われます。
巻四(五一九)の歌で大伴女郎が「雨に濡れることを嫌う恋人が昨夜の逢瀬で降りだした雨に濡れたためにもう懲りて逢いに来てくれないのでは」との不安を詠ったのに対して、こちらの歌では「天からの雨が降らないものだろうか。雨にこもってあなたに添いながら一日を過ごしたいものです。」と、雨の日に家に篭る恋人を持つ女性の立場ならこのような考え方も出来ますよとの趣旨の内容の一首になっています。
まあ、たしかにその通りであり女性の立場に立った恋歌としても素敵な一首に仕上がってはいるのですが、ただ、大伴女郎の詠んだ巻四(五一九)の歌が実際の恋に悩む女性のこころの真実味があったのに対して、こちらの歌は後の世に第三者によって詠まれた故のちょっと冷静な感じもしてしまいますよね。
それだけ実際に恋の最中にいる人間の心は冷静ではいられないという証拠なのかも知れませんが…
とはいえ、大伴女郎とこの歌の作者の関係を想像して読むと、なかなかに趣のある歌として浮かび上がってくるようなそんな気もする一首です。
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万葉集巻四
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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