万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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海上女王の和(こた)へ奉(まつ)れる歌一首 志貴皇子(しきのみこ)の女なり
梓弓爪引(あづさゆみつまび)く夜音(よと)の遠音(とほと)にも君が御幸(みゆき)を聞かくし好(よ)しも
巻四(五三一)
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梓弓を爪ではじく夜の音の遠ねのごとくでも、あなたさまのおでましがあると聞くのはうれしいことです。
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この歌は聖武天皇(しょうむてんわう)が海上女王(うなかみのおほきみ)に与え賜った先の巻四(五三〇)の歌に、海上女王が答え奉った一首。
海上女王は志貴皇子(しきのみこ)の娘で天智天皇の孫。
「梓弓を爪ではじく夜の音」というのは、邪を払うために衛士が鳴らす弦の音のことです。
そんな「遠くに聞こえる梓弓を爪ではじく夜の音のごとくでも、あなたさまのおでましがあると聞くのはうれしいことです。」と、聖武天皇と逢える喜びを詠った一首ですね。
ただ、先の聖武天皇の巻四(五三〇)の歌がその場の雰囲気に合わせて宮中に伝誦されていた古歌を口ずさんだのとおなじく、この海上女王の歌もまた天皇から寵愛を受ける内宮の女性の中に伝誦されてきた古歌の可能性もありそうです。
おそらくは聖武天皇を前に皆で風流を楽しむ場で古歌を詠い合った戯れの相聞歌だったのでしょうね。
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万葉集巻四
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万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価637円〜〜1101円(税込み参考価格)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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