万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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安貴王(あきのおほきみ)の歌一首并て短歌

遠妻(とほづま)の ここにあらねば 玉桙(たまほこ)の 道をた遠(どほ)み 思ふそら 安(やす)けなくに 嘆(なげ)くそら 安からぬものを み空行く 雲にもがも 高飛(たかと)ぶ 鳥にもがも 明日(あす)行きて 妹(いも)に言問(ことど)ひ わがために 妹も事無(ことな)く 妹がため われも事無く 今も見るごと 副(たぐ)ひてもがも

巻四(五三四)
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遠い妻はここにはいないので、玉桙を立てる道も遠いので、思いをよせるこころも休まらず、嘆くこころの穏やかでないものを、空を行く雲であったなら、高く飛ぶ鳥であったなら、明日にでも飛んで行って妻に言葉を掛けるのに。わたしの罪のために妻はそれでも無事であり、妻の罪のために私はそれでも無事であることをともにたしかめ、常に見るように一緒に居たいことだ。
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この歌は安貴王(あきのおほきみ)が因幡の八上出身の采女を思って詠んだ長歌。
安貴王は志貴皇子(しきのみこ)の孫で、天智天皇のひ孫。
次の巻四(五三五)の反歌に付けられた左注によると、安貴王は因幡の八上出身の采女(うねめ)と恋仲になり契りを結んだそうです。

采女(うねめ)とはこの時代、地方の豪族などの娘から容姿端麗なものを選んで朝廷に仕えるために差し出された者たちのこと。
おもに天皇の配膳などを行う仕事についていたようですが、いわゆる人質でもあったようですね。

安貴王はそんな采女のひとりと恋仲になった訳ですが、しかし、采女は天皇以外は手を出すことが許されない特別な存在とされていました。
そのために勅許による不敬罪(采女が天皇以外と恋をするのは不敬とされていました)としてこの采女は故郷に追放になったとのことです。
この歌はそんな八上采女を思って安貴王が詠んだもの。

「空を行く雲であったなら、高く飛ぶ鳥であったなら、明日にでも飛んで行って妻に言葉を掛けるのに…」
「わたしの罪のために妻はそれでも無事であり、妻の罪のために私はそれでも無事であることをともにたしかめ、常に見るように一緒に居たいことだ」との、采女を思う切ない気持ちがこころに響いてくるような一首ですよね。

お互いに愛し合っていても結ばれることを許されない封建時代の哀しい恋歌なのでした。


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万葉集巻四


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万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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