万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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賀茂女王(かものおほきみ)の大伴宿禰三依(すくねみより)に贈れる歌一首 故左大臣長屋王(なきひだりのおほまへつきみながやのおほきみ)の女(むすめ)なり
筑紫船(つくしぶね)いまだも来(こ)ねばあらかじめ荒(あら)ぶる君を見るが悲しさ
巻四(五五六)
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あなたの乗った筑紫からの船はまだ来ないのに、今の内からよそよそしいあなたを見るのが悲しいことです。
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この歌は筑紫の大宰府に赴任していた大伴宿禰三依(おほとものすくねみより)に賀茂女王(かものおほきみ)が贈った一首。
大伴三依が賀茂女王に贈ったと思われる歌が巻四(五五二)にありましたが、題詞によると賀茂女王は謀反の罪を着せられて自害に追いやられた長屋王(ながやのおほきみ)の娘のようですね。
長屋王は藤原不比等(ふじはらのふひと)亡き後、左大臣として朝廷の実権を握っていましたが、不比等の子たちである藤原四兄弟と対立して謀反の罪を着せられ自害に追いやられました。
この歌はそんな長屋王の娘の賀茂女王が大伴三依に贈った恋歌ですが「あなたの乗った筑紫からの船はまだ来ないのに、今の内からよそよそしいあなたを見るのが悲しいことです。」と、大伴三依の都への帰りを待ちわびながらも破局への不安を詠った一首となっています。
おそらくこの歌が詠まれたのは「長屋王の変」の後で、巻四(五五二)の歌の時点では臣下の最大の権力者である左大臣の娘であった賀茂女王が、一転して謀反人の娘という立場に変わっていたのでしょう。
大伴三依は旧来からの貴族である大伴家の人間であり皇親派である長屋王の側の立場であったとはいえ、公式に朝廷の謀反人とされた長屋王の娘の自分とはもう関係を続けたくないのでは、と心配したのでしょう。
この後、大伴三依と賀茂女王の二人の関係がどうなったのかは詳しくは分かりませんが、朝廷の権力争いによる陰謀によって肉親を失い、最愛の恋人すらも失うかも知れないとの賀茂女王の心細さが表れた、なんとも切ない一首ですよね。
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万葉集巻四
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他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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