万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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ちはやぶる神の社(やしろ)にわが掛(か)けし幣(ぬさ)は賜(たば)らむ妹に逢はなくに
巻四(五五八)
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偉大な神さまの社に私が捧げた幣を返していただきましょう。妻に逢えないのなら…
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この歌も先の巻四(五五七)の歌と同じく、筑紫の大宰府に赴任していた土師宿禰水道(はにしのすくねみみち)が、奈良の都に帰って来る時に詠んだ二首の歌のうちのひとつ。
巻四(五五七)の歌で「大船を慌てて漕ぎ進めて岩に触れ、転覆するならそれでもいい。早く愛しい妻に逢いたいのだ」と詠った内容の続きとなっていて、「偉大な神さまの社に私が捧げた幣を返していただきましょう。妻に逢えないのなら…」と、もし船が沈んで妻に逢えなかったのなら捧げた幣を返していただきますとの、こちらもまた大胆な内容の一首となっていますね。
「幣」は紙や麻や木綿などで作って木に挿み、神にささげた供え物のことです。
そんな神に供えた幣を返してもらうとはなんとも畏れ多い発想ですが、まあ、逆に言えばこれは偉大な神さまに守られているのだから船が転覆することなどあるはずがないとの、神への信頼の証でもあるのでしょう。
先の巻四(五五七)の歌と同じくこの歌も戯れの戯笑歌と言えそうですが、この時の都へ帰れる土師水道の喜びがよく表れている一首ですよね。
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万葉集巻四
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価637円〜〜1101円(税込み参考価格)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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