万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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衣手(ころもで)を打廻(うちみ)の里にあるわれを知らにそ人は待てど来(こ)ずける
巻四(五八九)
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衣の袖をうつ打廻の里にいる私の心も知らないであなたは待っていても来てはくれませんね
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この歌も巻四(五八七)の歌などと同じく、笠女郎(かさのいらつめ)が大伴家持(おほとものやかもち)に贈った二十四首の相聞歌のうちの一首。
「打廻(うちみ)の里」は明日香川を廻る里で、奈良県明日香村の雷丘のあたりかと思われます。
「衣手を打」は「打(う)つ」から同じ響きの「打廻(うちみ)」を引き出す修飾語。
「衣の袖をうつ打廻の里にいる私の心も知らないであなたは待っていても来てはくれませんね」との、打廻の里で一人、家持の来てくれるのを待っている女心の切なさを詠った一首ですが、この頃、笠女郎は明日香の里に居たということでしょうか。
笠女郎が家持に歌を贈り始めたのは天平五年あたりからのことですでに都は奈良の平城京に遷っており、家持も奈良の佐保山の麓に住んでいたはずで明日香の里とはかなりの距離があります。
ただ、大伴家の里も、もともとは雷丘の側にあり明日香を訪れた家持がそこで笠女郎と出会い、そこで二人は恋に落ちたのかも知れませんね。
どちらにしてもその距離感もあってかこの後、家持の心は女郎から徐々に遠ざかってしまったようですが、家持の心が遠ざかった後も笠女郎は家持への想いを持ち続けて切なくも追いかけていたようです。
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万葉集巻四
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万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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