万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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あらたまの年の経(へ)ぬれば今しはと勤(ゆめ)よわが背子(せこ)わが名告(の)らさね
巻四(五九〇)
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あらたまの年も経ったのでもうよいだろうと思って、けっしてあなた、私の名前を人には言わないでくださいね。
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この歌も巻四(五八七)の歌などと同じく、笠女郎(かさのいらつめ)が大伴家持(おほとものやかもち)に贈った二十四首の相聞歌のうちの一首。
「あらたまの」は「年」に懸る枕詞。
「もう二人の関係も長い月日が経ったから人に知られてもいいだろうと思って私の名前を語らないでくださいね」との、他人に恋を知られて噂になっては恥ずかしいとの女心の一首ですが、家持のほうの心がこの時点ですでに笠女郎から離れていたのだとするとなんとも悲しくてやるせない気もしますね。
まあ、万葉集の歌も必ずしも年代順に並べられているわけではないので、この歌が詠まれたころにはまだ家持も笠女郎を愛していた可能性もありますが…
どちらにしても年が経ったからこそより関係が深まると感じる笠女郎と、年が経つことで心が移ろっていってしまう家持の対比が悲しい一首のように思います。
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万葉集巻四
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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