万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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相思(あひおも)はぬ人を思(おも)ふは大寺(おほでら)の餓鬼(がき)の後(しりへ)に額(ぬか)づくがごと

巻四(六〇八)
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思ってもくれない人を思うなんて大寺の餓鬼像を後ろから伏して拝むようなものです。
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この歌も巻四(五八七)などの歌と同じく、笠女郎(かさのいらつめ)が大伴家持(おほとものやかもち)に贈った二十四首の相聞歌のうちの一首。
「餓鬼」は餓鬼道に落ちた凡人が作った像のことで拝んでも何の御利益もないものですが、ここでは自分を思ってくれない人を思うことはそんな餓鬼像をさらに後ろから拝むようなものだと嘆いています。


これまでの歌では家持に逢えない切なさを訴えながらも、家持の気持ちはまだ自分に向いていると信じていた笠女郎ですが、ここで初めて家持の気持ちに疑念を持ったようですね。
この歌だけでは状況が読み取れませんが、どうやらこの頃に笠女郎は家持と再び再会を果たしたようです。
そして家持の気持ちが自分から離れてしまっていることに気付いたようですね。

これまでの切ない恋ながらもその切なさを楽しむ余裕のあった笠女郎の歌と違い、この歌では恨み節にも似た悔しさがにじみ出ているようにも感じます。

それにしても餓鬼像の後ろから拝むとは、思い切った恨み節の表現ですよね…

家持の心変りを知った笠女郎の失望の大きさが窺われます。


奈良市西の京の、がんこ一徹長屋の駐車場にあるこの歌の歌碑。



がんこ一徹長屋。
一刀彫や赤膚焼などの伝統工芸の長屋です。


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万葉集巻四の他の歌はこちらから。
万葉集巻四


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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