万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

スポンサード リンク


近くあらば見ずともあらむをいや遠く君が座(いま)さばありかつましじ

巻四(六一〇)
----------------------------------------------
近くにいらっしゃるのならば逢わなくても生きていけますが、こんなに遠くにあなたが居ては生きていられそうもありません。
----------------------------------------------

この歌も笠女郎(かさのいらつめ)が大伴家持(おほとものやかもち)に贈った二十四首の相聞歌のうちのひとつで最後の一首。
先の巻四(六〇九)の歌と同じく、家持の心変りを知って明日香の打廻の里に帰って来た笠女郎が家持に贈った最後の歌ですが、笠女郎らしい切ない未練の一首となっています。

「いや遠く」というのはもちろん平城京と明日香の里の距離のことですが、家持の心が自分から遠のいてしまったことも暗に込めているのかも知れませんね。
上の句も「あなたの心が近くにいらっしゃるのならば逢わなくても生きていけますが…」と解釈すると、なんとも哀しい失恋の一首として読み手に迫ってくるものを感じさせてくれますよね。

「あなたが居なくては生きては行けません」というのは恋愛の常套句ですが、ただ、この笠女郎の場合は決して大げさな表現ではなくほんとうに生きる希望を失ってしまったのではないかとさえ思えます。

この後の笠女郎についてはどうなったのか現在に伝わってはいませんが、出来るならば素敵な相手を見つけて幸せになっていてほしいものですね。
以上、笠女郎が大伴家持に贈った二十四首の恋歌でした。

この後、家持が笠女郎に贈った返歌が二首続きます。


スポンサード リンク


関連記事
万葉集巻四の他の歌はこちらから。
万葉集巻四


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

万葉集入門(トップページ)へ戻る

当サイトはリンクフリーです、どうぞご自由に。
Copyright(c) 2015 Yoshihiro Kuromichi (plabotnoitanji@yahoo.co.jp)


スポンサード リンク


欲しいと思ったらすぐ買える!楽天市場は24時間営業中

Amazon.co.jp - 通販