万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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剣太刀(つるぎたち)名の惜(を)しけくもわれは無し君に逢はずて年の経(へ)ぬれば
巻四(六一六)
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剣太刀の名など私はもう惜しくもありません。あなたに逢えずに年を重ねてきたので…
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この歌も巻四(六一三)の歌などと同じく、山口女王(やまぐちのおほきみ)が大伴宿禰家持(おほとものすくねやかもち)に贈った五首の恋歌の内のひとつ。
「剣太刀(つるぎたち)」はこの場合は「かたな」の「な」の響きから、「名」にかかる枕詞として使用されています。
巻四(六一三)の歌のときにも書きましたが、この時代の人々にとって自分の「名」は現代人が考えるよりもはるかに大切なもので、その名が恋の浮名として人々の噂に上がることを極端に嫌いました。
それにもかかわらず山口女王は「剣太刀の名など私はもう惜しくもありません。あなたに逢えずに年を重ねてきたので…」と、家持が自分を受け入れてくれるのならもはや名など惜しくはないとその恋の切なさを訴えています。
それほどまでに長い時間を、家持に苦しい片恋をし続けて来たわけですね。
これだけ長い時間を思い続けて来た家持との恋が成就できるなら、他には何を失ってもかまわないとの切ない恋心の一首です。
奈良県斑鳩町の藤の木古墳から発掘された剣太刀の復元品(奈良県立橿原考古学研究所展示品)。
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万葉集巻四
万葉集書籍紹介(参考書籍)
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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