万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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湯原王の歌一首

吾妹子(わぎもこ)が恋ひ乱れたり反転(くるべき)に懸(か)けて縁(よ)せむとわが恋ひそめし

巻四(六四二)
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あなたに恋をして私の心は乱れてしまいました。そんな心を糸巻きにかけて寄せようと私はこの恋を始めてしまったのだろうか。
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この歌も湯原王の詠んだ恋歌。
題詞には「湯原王の歌一首」とのみ記されていますが、湯原王(ゆはらのおほきみ)が旅先で出会った娘子(をとめ)に贈った巻四(六三一)の歌からつづく一連の相聞歌の内のひとつと考えて問題ないでしょう。

「反転(くるべき)」は四角い木の枠で糸を巻き付ける道具。
そんな糸巻きにかけるように「あなたに恋して乱れた心をひとつに寄せようと、私はこの恋を始めてしまったのだろうか。」と、娘子への恋心のときめきが失われてしまったことを嘆いています。
この場合、「恋ひ乱れたり」とは恋にときめいている心情のことで、そんな乱れた心を糸巻きで引き寄せるとは、乱れときめいた心をひとつにまとめて「平常に戻す」ことになるわけですね。

つまりは「恋に乱れた心を平常に戻したくて恋を始めたわけではないのに…」と、娘子への恋心が急速に失われて冷めてしまった自身の心に嘆いているわけです。

たしかに言われてみれば現代人の恋でも、関係が長く続けばどうしても最初に出逢ったころの恋のときめきは失われてしまうものですよね。
「最初に出逢った時のように、ずっと恋する気持ちを持ち続けていたかった」との心情は、みなさんにも十分に共感できるものではないでしょうか。

これらの一連の相聞歌については、何度か述べたように実際の出来事ではなく湯原王の創作の歌物語である可能性が高いかと思います。
ただ、その場合も、湯原王ひとりで詠んだものなのか、あるいは娘役を買って出た誰かがいたのかなど、いろいろな可能性がありそうですね。
もちろん、宴会などの席で詠まれた戯れ歌の可能性もありますが…
どちらにしても、架空の歌物語の中に当時を生きた人々の真実の恋の感情が込められているようなそんな気はします。

以上、湯原王と娘子の相聞歌はこれにてお終いです。


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万葉集巻四


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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