万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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春日(かすが)山朝ゐる雲のおほほしく知らぬ人にも恋ふるものかも
巻四(六七七)
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春日山に朝にかかる雲のように心のはっきりしない人にも恋するものなのですね。
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この歌も巻四(六七五)などの歌と同じく、中臣女郎(なかとみのいらつめ)が大伴宿禰家持(やかもち)に贈った五首の恋歌のうちのひとつ。
中臣女郎がこれだけ熱心に恋の思いを訴えているにもかかわらずはっきりとした態度を見せてくれない家持の心を、まるで「春日山に朝にかかる雲のようにおぼろ」だと譬えながらもなお恋してしまう女心が素敵に表現されていますね。
まあ、これらの中臣女郎の歌に対して家持はまともに返歌も贈っていないことからもあるいは家持の態度は最初から明確だったのかも知れませんが、いつの世も恋する側の人間はすべてを自分にとって都合の良い方向に考えてしまうものなのでしょう。
中臣郎女も、家持は多忙なのかもしくは人の目を気にしているだけでほんとうは自分に逢いたいのだとそう信じていたのでしょう。
(まあ、実際の家持の心がどうだったのか知る術はわれわれにもありませんが…)
そんな片恋にも似た中臣女郎の恋心がなんとも切なく響いてくる一首のように感じます。
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万葉集巻四
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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