万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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童女(をとめ)の来(きた)り報(こた)へたる歌一首

葉根蘰今する妹は無かりしをいづれの妹そ幾許(ここだ)恋ひたる

巻四(七〇六)
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葉根の蘰を新たにつける少女などおりませんのに、どこの女性があなたにそんなに恋をしているのでしょう。
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この歌は大伴宿禰家持(おほとものすくねやかもち)が童女(をとめ)に贈った先の巻四(七〇五)の歌に、童女が答えた一首。
童女が夢に現れて以来ずっと恋い慕っていると詠った家持に対して、「葉根の蘰を新たにつける少女などおりませんのに、どこの女性があなたにそんなに恋をしているのでしょう。」と、自身の家持への恋心を否定した内容となっています。

ただし、これはほんとうに家持に対する恋心がないわけではなく、巻四(七〇五)の歌でも書いた通りこの童女が「葉根蘰(はねかづら)」をつける巫女であるとするなら、神に仕える身としてのたしなみで男性への恋心を否定している意味と解釈したほうがいいかも知れませんね。
「わたしは神さまに仕える神聖な巫女ですから、男性であるあなたへの恋などは許されないのです…」といった感じでしょうか。

その上で、題詞には「童女(をとめ)の来(きた)り…」とありますが、未婚の女性が男性のもとに来るなどということはこの時代では滅多にないことから、やはりこの歌も実際の作者は家持自身で巫女との恋を戯れで詠んだ創作和歌ではないかと思われます。
家持がどのような意図でこれらの歌を詠んだのかはわかりませんが、万葉集も後期の家持たちの時代になってくるとこのように後の世の文学作品に近い創作がなされ始めていることに少し驚かされます。


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万葉集巻四


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価637円〜〜1101円(税込み参考価格)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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