万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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大伴坂上郎女の、跡見庄(とみのしたどころ)より、宅(いへ)に留(とど)まれる女子(むすめ)の大嬢(おほをとめ)に賜へる歌一首并て短歌
常世(とこよ)にと わが行かなくに 小金門(をかなと)に もの悲しらに おもへりし わが児の刀自(とじ)を ぬばたまの 夜昼(よるひる)といはず 思ふにし わが身は痩せ(や)せぬ 嘆(なげ)くにし 袖(そで)さへ濡(ぬ)れぬ かくばかり もとなし恋ひば 古郷(ふるさと)に この月ごろも ありかつましじ
巻四(七二三)
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死の国に私が行くというのでもないのに、家の門に立って悲しんでいたわが子のあなたを、ぬばたまの夜と言わず昼と言わずに思っていると、わが身は痩せてしまいました。嘆き悲しみ袖まで濡れてしまいました。こうも不安で恋しく思うと故郷のこの地に長く過ごすことが堪えられそうにありません。
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この歌は大伴坂上郎女(おほとものさかのうへのいらつめ)が娘の大嬢(おほをとめ)に贈った長歌です。
この時、坂上郎女はひとり家を離れて所有の田地である跡見庄(とみのしたどころ)に居たようですね。
次の巻四(七二四)の反歌の後の左注によると、どうやら佐保の邸宅で坂上郎女の帰りを待っている大嬢からの歌に答える歌としてこの長歌と次の巻四(七二四)の反歌を贈ったようです。
歌の内容としては、「まるで私が死の世界に行ってしまうかのように悲しんで家の門に立って見送ってくれた大嬢のことを思うと、私の身は痩せてしまいました。嘆き悲しみ袖まで濡れてしまいました。こうも不安で恋しく思うと故郷のこの地に長く過ごすことが堪えられそうにありません。」と、娘の大嬢を愛しむ気持ちが母親らしい表現で詠われていますね。
坂上郎女の娘を思う気持ちが素直に表現された一首のように思います。
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万葉集巻四
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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