万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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大伴宿禰家持の坂上家(さかのうへのいへ)の大嬢(おほをとめ)に贈れる歌二首 〔離(さか)り絶ゆることあまた年にして、復会(またあ)ひて相聞往来(そうもんわうらい)せり〕

忘(わす)れ草わが下紐(したひも)に着(つ)けたれど醜(しこ)の醜草言(しこくさこと)にしありけり

巻四(七二七)
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恋心を忘れるという忘れ草を私の下紐に着けたのだけれど、このいまいましい草は名前だけでした。
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この歌は大伴宿禰家持(おほとものすくねやかもち)が大伴坂上大嬢に贈った二首の恋歌の内の一首。
大嬢は坂上郎女の娘で、家持とは従兄妹になります。
家持と大嬢は過去にも歌を贈りあっていたことがあったのですが、大嬢の巻四(五八四)の歌を最後にどうもその後の八年ほどの長い期間交流が途絶えていたようですね。

そんな二人にどのような心境の変化があったのかは分かりませんが、家持は「恋心を忘れるという忘れ草を私の下紐に着けたのだけれど、このいまいましい草は名前だけでした。」と、大嬢への恋心を忘れようとしたけれど忘れることが出来なかったとの復縁を求めるような歌を贈ります。
「忘れ草」はヤブカンゾウやノカンゾウなどのカンゾウ類のことで、恋心を忘れさせてくれると言われていたようですが、家持にとっては「名前ばかりで効果はなかった」という訳ですね。

まあ、忘れようとしても忘れられなかったと言われれば、女性もわるい気はしないものなのでしょう。
この後、二人はまた恋の炎を燃やしていったようです。


ヤブカンゾウ。
忘れ草は夏に咲くヤブカンゾウやノカンゾウなどのカンゾウ類のこと。
忘れ草との名前の由来は中国の俗信で、その花の美しさから「眺めていると憂さを忘れる」や、新芽を食べると「心配事をすべて忘れてしまうほど美味しい」などの説があるようです。


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万葉集巻四


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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