万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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春風の声(おと)にし出(で)なばありさりて今ならずとも君がまにまに
巻四(七九〇)
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春風が音を立てて吹けば…しばらくはこのままで。今でなくとも、いつかあなたのお望み通りに…
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この歌も先の巻四(七八九)の歌などと同じく、藤原朝臣久須麿(ふじはらのあそみくすまろ)からの娘への求婚に、娘の父である大伴宿禰家持(おほとものすくねやかもち)が答えて贈った一首。
家持の気持ちの迷いがそのまま歌に表れているのか、言い差しの言葉が多くはっきりとした断言がされていませんが「春風が音を立てて吹けば心の霞も払われましょうから、しばらくはこのままで…今でなくとも、いつかあなたのお望み通りになることもありましょう。」と、言葉を補足するなら一応、こんな感じの意味になるでしょうか。
つまりは幼い娘の気持ちを考えて、婚姻についてはもう少し娘が成長するまで待ってほしいと久須麿からの求婚を今は断ることにした訳ですね。
家持の立場的にははっきりと断ることも出来たはずですが、将来に含みを持たせているのはやはり家持もこの婚姻(藤原家との結びつき)に未練があった証拠かと思われます。
それでもそんな政略的な判断よりも娘の未来の恋の可能性を大切にしたのは、家持に恋心を理解する文学青年的な気質があったからではないでしょうか。
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万葉集巻四
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価637円〜〜1101円(税込み参考価格)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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