万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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娘子らの更報(またこた)へたる歌三首
若鮎(わかゆ)釣る松浦の川の川波の並(なみ)にし思(も)はばわれ恋ひめやも
巻五(八五八)
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若鮎を釣る松浦の川の川波のように並の思いならば私はこんなにも恋こがれるでしょうか。
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この歌も「松浦河に遊ぶ」と題された一篇の歌群の一首で、主人公の男が娘子に贈った歌に娘子がさらに返した三首の歌のうちのひとつ。
この歌もまた、松浦の地を訪れた大伴旅人(おほとものたびと)たちが宴の席で詠んだもので、大宰府の官人か、あるいは宴席に同席した遊女(うかれめ)などが娘子役を演じて詠んだ歌でしょうか。
歌の内容は「若鮎を釣る松浦の川の川波のように並の思いならば私はこんなにも恋こがれるでしょうか。」と、「松浦川の川波(かはなみ)」から同音で「並(なみ)の思い」を引き出しています。
「あなたへの思いは並大抵の恋心ではありません」と、その恋心の深さを訴えているわけですね。
序詞を使うなど内容的には男役が詠んだ巻五(八五七)の歌への返歌と言えるしょう。
娘子役の見事な返しに、旅人たち宴の席の人々の拍手喝采する声まで聞こえてきそうですね。
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万葉集巻五
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価637円〜〜1145円(税別)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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