万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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反歌一首
白波の千重に来寄する住吉(すみのえ)の岸の黄土(はにふ)ににほひて行かな
巻六(九三二)
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白波が幾重にも来寄せて来る住吉の岸の黄土に衣を染めて行きたいよ
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この歌も聖武天皇(しやうむてんわう)の難波行幸に従駕した車持朝臣千年(くるまもちのあそみちとせ)が住吉の浜を讃えて詠んだ歌で、先の巻六(九三一)の長歌に付けられた反歌です。
「黄土(はにふ)」は文字通り黄色い土で、この当時、住吉の岸辺などで出土する黄色の粘土で衣を染める鉱物染めが有名だったようですね。
この歌でもそんな「白波が幾重にも来寄せて来る住吉の岸の黄土に衣を染めて行きたいよ」と、衣を黄土で染めたいと詠うことで住吉の土地を讃える土地讃めの一首となっています。
住吉の黄土で衣を染めたいと詠うのはこの当時の歌の常套句ですが、土地そのものでもある土で衣を染めることは万葉人にとってはまさに土地の加護を身に付ける行為そのものだったのでしょうね。
そんな住吉の土地への信仰が垣間見えて、この歌もまた興味深い一首のように思います。
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万葉集巻六
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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