万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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春の雑歌(ざふか)
志貴皇子(しきのみこ)の懽(よろこび)の御歌(みうた)一首
石(いは)ばしる垂水(たるみ)の上(うへ)のさ蕨(わらび)の萌(も)え出づる春になりにけるかも
巻八(一四一八)
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岩の上をほとばしる滝の上の蕨が萌え出でる春になったことだなあ
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この歌は万葉集巻八の冒頭を飾る、志貴皇子(しきのみこ)が詠んだ懽(よろこび)の御歌(みうた)です。
万葉集巻八以降は万葉集の中の第二部ともいえる構成となっていて、巻八では四季ごとの雑歌と相聞歌が収録されています。
この歌はその冒頭の一首。
歌の内容は「岩の上をほとばしる滝の上の蕨が萌え出でる春になったことだなあ」と、植物の萌え出ずる春の到来を歓んで詠んだ歌となっています。
「さ蕨(わらび)」は植物のワラビのこと。
ただ、「懽(よろこび)の御歌(みうた)」と題されているように、春の到来に限らずあらゆる場面を春の到来に譬えて祝えるような目出度さの感じられる歌でもありますよね。
志貴皇子は天智天皇の皇子で、壬申の乱後は敗北者側の皇子として危うい立場にいた人物ですが、朝廷の権力者争いから身を引いた位置に自らを置くことでその後の人生を生き抜いた人物です。
(「志貴皇子についてはまた巻三:二六七なども参考にしてみてください。)
そんな権力争いとは遠い位置にいた志貴皇子の歌であるからでしょうか。
この歌からは純粋に春の到来を歓ぶ心が感じられて、まさに巻八の冒頭を飾るのにふさわしい一首のように感じます。
奈良市田原の春日宮天皇陵(田原西陵)前にあるこの歌の歌碑。
参道に入る前の道路沿いに隠れるようにひっそりと立っていて、なんとも志貴皇子らしい歌碑ですね。
志貴皇子のお墓である春日宮天皇陵の参道。
春日宮天皇陵(田原西陵)。
志貴皇子の子である光仁天皇が即位したことで、志貴皇子にも死後に春日宮天皇の称号が贈られました。
(実際に即位した天皇ではないので歴代天皇には数えられていませんが…)
田原地区の田園の中にある志貴皇子のお墓らしい長閑な御陵です。
ワラビの新芽。
萌え出づる春になりにけるかも…
ワラビは春の山野に生える山菜で、新芽の先が三つに分かれるのが特徴です。
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万葉集巻八の他の歌はこちらから。
万葉集巻八
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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