万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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去年(こぞ)の春逢へりし君に恋ひにてし桜の花は迎へけらしも
右の二首は、若宮年魚麿(わかみやのあゆまろ)誦(よ)めり。
巻八(一四三〇)
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去年の春お逢いしたあなたに恋焦がれて桜の花は今年も咲いてあなたを迎えてくれましたよ
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この歌も桜の花を詠んだ歌で、先の巻八(一四二九)の長歌につけられた反歌。
左注に「右の二首は、若宮年魚麿(わかみやのあゆまろ)誦(よ)めり。」とあるように、この歌も先の巻八(一四二九)の長歌も若宮年魚麿が伝誦した歌を宴席などで誦じたもので、実際の作者は不明となっています。
歌の内容は「去年の春お逢いしたあなたに恋焦がれて桜の花は今年も咲いてあなたを迎えてくれましたよ」と、去年も咲いた桜があなたに逢うために今年もまた花を咲かせましたよとの桜を擬人化して詠んだ一首となっています。
むしろ人間の側のほうが桜の咲くのを恋焦がれて待っていたのでしょうけれど、こう詠われることで実際に桜が自分に逢うのを楽しみにしてくれていたような気分になって、この歌が誦じられた場の空気も盛り上がったことでしょう。
まさに桜の花を詠った目出度い春の一首のように感じます。
桜の花(ヤマザクラ)。
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万葉集巻八
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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