万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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高田女王(おほきみ)の歌一首 高安の女(むすめ)なり
山吹(やまぶき)の咲きたる野辺のつぼすみれこの春の雨に盛りなりけり
巻八(一四四四)
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山吹が咲いている野辺のつぼすみれはこの春の雨に濡れていま花盛りだなあ
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この歌は高田女王(たかたのおほきみ)が詠んだ一首です。
高田女王は高安王(たかやすのおほきみ)の娘で、長皇子(ながのみこ)の孫にあたります。
つまりは天武天皇のひ孫ですね。
高田女王については巻四(五三七〜)の歌などもまた参考にしてみてください。
そんな高田女王が詠んだ歌ですが「山吹が咲いている野辺のつぼすみれはこの春の雨に濡れていま花盛りだなあ」と、山吹の花の下に咲いているつぼすみれの盛んな様子を見つけて詠った一首となっています。
これはつまりは、山吹の下にいままでは咲いていなかったつぼすみれを見つけた喜びの歌なわけですね。
「つぼすみれ」は現在のツボスミレのことでしょうか。
あるいは単に坪に咲くすみれの意味かも知れませんが、山吹とつぼすみれという二つの花を詠い込みながら春真っ盛りの雨の情景を見事に表現した歌ですよね。
大方の人は季節と言えば春夏秋冬の四つしかないと思うかも知れませんが、野に咲く植物に目を向ければ梅の咲く春もあれば山吹やすみれの咲く春など春の中だけでも幾つもの春があることに気づくはずです。
この歌もまさにそんな山吹やつぼすみれの咲く春の到来を心から祝っている一首のようにも感じます。
山吹の花。
ツボスミレ。
ツボスミレはスミレ種類の中でも横に平らな独特の花の形をしています。
大方の人は季節と言えば春夏秋冬の四つしかないと思うかも知れませんが、野に咲く植物に目を向ければ梅の咲く春もあれば山吹やすみれの咲く春など春の中だけでも幾つもの春があることに気づくはずです。
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万葉集巻八
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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